行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)家畜衛生試験所(AHRI)は17日、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)ナンシー狂犬病・野生生物試験場(Nancy OIE/WHO/EU Laboratory for Rabies and Wildlife, ANSES)とともに、台湾北部・新北市淡水区にある家畜衛生試験所内にて「2018年狂犬病OIEツイニング・プロジェクト」の第1回会合(Launch Meeting)を開催すると共に、狂犬病試験場の技能試験を行う「アジア狂犬病診断技能試験センター(Laboratory proficiency testing for Rabies Diagnosis within Asian Network)」の開所式を行った。狂犬病に関する多国籍の研究チームを確立し、アジアに狂犬病予防のネットワークを構築することが狙い。
同センターの開所式には、農業委員会の林聡賢主任委員(大臣に相当)、国際獣疫事務局(OIE)アジア太平洋地域事務所の釘田博文代表、衛生福利部(日本の厚生労働省に類似)疾病管制署の羅一鈞署長、ナンシー狂犬病・野生生物試験場の責任者であるFlorence Cliquet博士などが立ち会った。また、同日に行われたツイニング・プロジェクト第1回会合では、国際獣疫事務局の代表が世界における狂犬病の現状と予防対策を説明したほか、ナンシー狂犬病・野生生物試験場が狂犬病リファレンスラボラトリーの任務について紹介した。また、各国の代表者が、それぞれの狂犬病対策の経験や、アジアにおける今後の協力ネットワークに寄せる期待などについて意見を交換した。
台湾では2013年、野生のシナイタチアナグマの狂犬病感染が確認された。これを受けて家畜衛生試験所は2014年、ナンシー狂犬病・野生生物試験場と「台湾シナイタチアナグマ狂犬病病原性試験協力覚書」を交わし、十分な成果を挙げると共に、良好なチームワークを築き上げてきた。このことから双方はさらに、狂犬病に関する「ツイニング・プロジェクト(協力計画)」を策定。今年6月に国際獣疫事務所から実施の許可を得ていた。
第1回会合にはフランス、日本、韓国、シンガポール、カンボジア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、オーストラリアなど10カ国の狂犬病専門家、それに国際獣疫事務局の代表らが参加した。
家畜衛生試験所はナンシー狂犬病・野生生物試験場との「ツイニング・プロジェクト」を通して、台湾に「アジア狂犬病診断技能試験センター」を設立するほか、将来的には国際獣疫事務局認定の狂犬病リファレンスラボラトリーを設立し、アジア太平洋地域の各国と協力し、アジアにおける狂犬病診断能力や予防・拡大防止能力を向上させたいと考えている。
家畜衛生試験所によると、「アジア狂犬病診断技能試験センター」では2019年の年末までには、アジア諸国のために狂犬病診断能力の鑑定を行うことができる見通し。これが可能になった場合、例えばすでに狂犬病の診断能力を有する日本が、台湾の「アジア狂犬病診断技能試験センター」に申請した場合、同センターはウイルスのサンプルテストなどの資料を申請者に送る。日本の申請者が同センターに診断結果を送り返すと、同センターがその鑑定を行う。鑑定の結果、狂犬病診断能力を備えていると判断された場合、日本の申請者の診断結果は、海外でも直接認められ、受け入れられることになる。「アジア狂犬病診断技能試験センター」は、ニュージーランドやオーストラリアなどアジア太平洋諸国から広く鑑定の申請を受け付ける。